サクラの花が咲くころだけに美しい姿を現すギフチョウ。
明るい雑木林をかろやかに舞っては春の花を訪れ、また陽光をいっぱいに浴びる。
その姿は、まさにナチュラリストを魅了する「春の女神」である。
もともとギフチョウは、カシ類などの多い照葉樹林帯をすみかとしていた。
しかし、照葉樹林のような暗い林内では、幼虫の食べる草であるカンアオイ類や成虫の蜜源となるスミレ類などの花が育ちにくいために、渓谷の岸や崩壊地などの明るい空間で細々と生活していたに違いない。
やがて、人間が薪や炭を得るために照葉樹林を伐採し、クヌギやコナラの明るい雑木林が広がったことで様子が一変した。
ギフチョウは林のなかにもすむことができるようになり、個体数も著しく増加した。
里山環境の出現によって、生きものたちの多くが繁栄をとげたのである。
しかしそれも、一九六〇年ごろに始まる社会構造の変化、とくに燃料革命によって終止符が打たれる。
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