雑木林と聞いてふつう連想するのはクワガタなどの活躍する夏の夜の世界だろう。
たしかに夏の雑木林は子供が(大人も?)心躍らせる楽しい世界だが、実は雑木林の特徴はむしろ早春にある。
冷たい冬が終わり、陽差しも暖かくなると、生きものたちも活動を再開する。
林床に直接陽が差し込み、温度も上がる早春は、ほかの季節では見られないカタクリやエビネなど多くの植物が咲き誇り、また「春の女神」として知られるギフチョウのように早春にだけ活動する昆虫も多い。
これらの生きものは春の一時期に一気に成長し、あとは翌年まで眠っているという雑木林のサイクルに見事に合致した興味深い生活史をもっている。
このように多くの生き物を育んできた雑木林は、近年の炭から石油燃料への転換によって経済価値が失われ、手入れもされなくなり、荒れ放題の状況であるうえ、宅地造成の対象として林ごとつぶされる例も多い。
雑木林の生きものたちは今や危機的状況に追い込まれつつある。